10年11月下旬、 双葉町を講演で訪れた、 町の催しである「第4回子どもフォーラム」の基調講演で、 それに先立ち。 地元の小、中学生から公募した俳句の賞の表彰式もあって、 楽しくいい時間を過ごさせていただいた、 終わって楽屋でひと息入れていたときのことである、 制服制帽の高校生2人が現れ、 色紙にサインを求められた、 何かの運動部員であることは、 はきはきした受け応えと、 姿勢のよさですぐに解った、 畳の楽屋だったので、 サインがすむまで2人はきちっと正座していた、 サインを終えて写真を一緒に撮るときに、 「運動は何をやっているの?」と問い、 初めて野球部員であることが解った、 「じゃ、甲子園だね」 この言葉に、はい、といい声があがったけれど、 甲子園行きの自信はなさそうだった、 終始礼儀正しく さわやかな気配を残して彼らは去った、 それから4カ月も経たないうちに、 3・11とそれがもたらした原発事故で、 双葉町は思いもよらぬ過酷な運命に翻弄された、 今朝のМ紙に双葉高女子柔道部が、 彼岸の全国高校柔道選手権大会の、 団体戦に出場する、 という記事が載っていた、 会津若松市の葵高校に間借りして、 通学しながらの快挙である、 あの2人の野球部員の顔が思い浮かんだ、 きっと野球を続けているだろう、 さわやかにボールを追い、打ち、 そして、学び、 ふるさとの再興を確信し、 力を養っているに違いない、 彼らの色紙に添えた言葉は、 「今が出発点」だった。
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