今は昔、電気、水道が無尽蔵に使えた住宅特区が東京都下にあった

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志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ No.222 2012年6月22日 掲載分
 

今は昔、電気、水道が無尽蔵に使えた住宅特区が東京都下にあった

1938(昭和18)年から1952(昭和27)年まで、
旧国鉄の武蔵境変電所に隣接する官舎に住んでいた、
当時、武蔵境発電所は、
東洋一の規模と言われた、
他県の官舎から越してきた3歳だった僕は、
ウーンと発電機の振動音を、
20戸前後の官舎まで轟かせた、
巨大な白亜の変電屋を見て、
慄いた記憶がおぼろげにある、
変電屋はB29が落とす1トン爆弾に耐えるよう、
厚いコンクリート層で覆う工事が終えた直後だった、
しかし、変電所と官舎は、
近隣の軍需工場や、
大きな施設が、
完膚なきまでに爆撃されたにも拘わらず、
焼夷弾の1個さえ落とされなかった、
変電所を破壊したら電車が動かなくなり、
占領後に支障をきたす、
という米軍の判断だったらしい、
小学生時代、
電気と水の有り難さを知らずじまいで成長した、
水道で言えば、
庭や、物置小屋に至るまで、
7,8箇所に蛇口があったと思う、
庭の蛇口は池に引いていたので、
24時間出しっぱなしで、
小さな池は生意気に流水池同然だった、
巨大な変電器を冷やすための冷却水を、
深い井戸から大量に汲み上げており、
その余剰水が官舎に給水されるので、
使い放題なのである、
真夏、東京の街が渇水で、
給水車が出る光景は、
ここでは夢のまた夢だった、
もっと使い放題が電気で、
新潟にある国鉄の信濃川発電所から、
高圧線で常に送電されている変電所にとって、
20戸の官舎に回す電気の量は、
いくら使われようと、
九牛の一毛ですらなかったろう、
電気の消費量が多いという、
ニクロム線の電熱器をいくつも並べて煮炊きした、
風呂も電気風呂、
ストーブもだるまストーブを改造し、
電熱器をいくつもセットしたものだった、
さて、
これだけ水や、電気を使って、
水道料や、
電気代は払わなかったと思う、
使い放題でメーターもなかったはずだから、
もちろん、全国に10数万戸はあったはずの国鉄官舎で、
こんな野放図なことが許されたのは、
東洋一の大変電所の官舎であるここだけの話だろう、
父の退職で普通の家に住むようになって、
しばしば断水や、停電の憂き目にあい、
ようやく水と電気の大切さを知った、
旧国鉄変電所城下町で、
子供時代を送ったことで、
水と電気のことが新聞テレビのニュースになるたびに、
罪悪感にチクチク心が痛む。

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