すまなかった、 と今でも思う、 僕の身長よりも長いきみを、 僕は10年前、 半袖と長袖のTシャツを重ね着し、 紫のタイツに黄色い短パンをはいて、 きみをざっくり巻いて、 端を風になびかせながら、 街を歩いた、 残暑が終わってまもなくだったかなあ、 奇異に思う視線が、 やたらきみと僕を突き刺してきた、 その意味は、 待ち合わせた人と会ってすぐに解けた、 「なんでそんなマフラーしているの?」 「気分いいんだよ。季節を先取りしているしているようで」 「変だわ、見っともないわ」 そうか、と僕は思った、 初めてタイツ姿で街を歩いたときは、 迫害に近いリアクションで報われたけど、 マフラーでさえそうなんだ、 誰も今の時期はやっていない、 つまり、 異端は駄目ということ、 ごめんね、 タイツのときと違って貫けなかった、 それに、 薄着の僕には、 マフラーはまだきつい陽気だった、 きみを、 邪険に収納庫に突っ込んだよね、 とき移って今は、 まだ残暑のときから、 マフラーを巻いている奴が、 ごろごろ歩いていた、 なぜ巻いてるの、 と訊けば、 「みんなやってるから」 という答が返るだろ、 みんなやってるからやらないと、 安心できない、 人間社会はそんなもんだ、 きみを巻こうと思ったけど、 みんなやってるのに、 なぜやるの、 ともう一人の僕が問うんだ、 そうだ、 と僕は頷く、 みんなと同じなんて、 コピーのようで気持ち悪い。
スクロールしてご覧下さい。▼