ばあちゃんが淋しがってる、 ザシキワラシよ、 そろそろ帰っておいでよ、 ここは海から何キロも離れた高台だから、 あいつも襲ってこなかったし、 大揺れして怖かったけど、 築150年の、 この家はびくともしなかった、 「ワラシが守ってくれたんじゃ」 ばあちゃんは言ったけど、 何日か経って、 「ワラシは山奥へ行っちゃったに」 と寂しそうな顔をした、 ザシキワラシはその家を守ると、 凄く消耗するって、 この地区も今風の家ばかりになって、 ザシキワラシが棲めるのは、 わが家だけになったと、 だから地区を丸ごと守って、 ザシキワラシは、 気息奄々の状態で出ていったと、 そうばあちゃんは言ってた、 深山幽谷の精気を吸って戻ってくる、 というけど、 ザシキワラシよ、 僕も早く戻って欲しいんだ、 ばあちゃんは、 毎日のようにきみを見ていたらしけど、 僕はまだ1度も見ていない、 学校の勉強している僕の後ろで、 よく僕を見ている、 とばあちゃんは言うけど、 今度パッと振り返って、 きみを見てやる、 それに、 きみが戻ってくれば、 みんながみんな、 心の底から明るくなると思うんだ、 だから、 ザシキワラシよ、 戻ってきてくれないか。
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