ふるさとの海は、 ちいさな湾で、 地引網の浮きが、 海面に点々と浮かんでいた、 その地引網を引くときね、 子供なのに、 漁師さんの間に混じる、 いつも大漁で、 ムロアジのお腹が光る、 持ってけってね、 バケツにどさりと入れてくれた、 夜、 寂しいときね、 浜辺に出るの、 点々と浮かぶ浮きを、 ウサギが1羽また1羽、 飛び石にして沖へ出ていく、 遊んでるんだろうか、 浮きは途切れるのに、 ウサギは泳げるんだろうか、 解んない、 満月の夜、 イルカたちが、 2組に分かれて、 浮きの点線を挟んで、 蹴鞠を鼻で蹴り上げ、 バレーボールをしていた、 スパイク、 凄いよ、 盛大なしぶきを上げて、 ジャンプして叩きこむ、 でも、 拾い上げられ、 トスして叩き返される、 蹴鞠が月光に映えて、 気が遠くなるほど妖しいの、 その蹴鞠、 どうしたんだろう、 壇ノ浦で沈んだ御座船から、 拾ってきたのかな、 はるばる伊豆の海まで、 翌日、 地引網を手伝って引いて、 イルカが1頭、 ムロアジの中に紛れていた、 鼻が潰れていたっけ、 ふるさとの海は、 美しく謎に充ちていた。
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