ほう、時計台がある、、 札幌の…か、 いや違う、 あれなら何度も見ているから、 もしかしたら、 多治見の瀟洒な図書館の時計台? 確か今は旧館になっている、 なんで知ってるんだろう、 そう、講演に行った、 そう、僕、今は休職中だけど、 民俗学の大学教授です、 多治見の…時計台でもないなあ、 建物が小さすぎるし、 よく見ると、 洋菓子チエーン店じゃないか、 僕は後ろを振り返った、 人っ気が途絶えている改札口、 私鉄のどこかの小駅らしい、 何でこんな駅で降りたんだろう、 少し悲しい、 時計台で時間を見る、 午後には遅く夕方には早い、 この駅が閑散な時間帯らしい、 駅前を見渡しても人影は少ない、 やはり人は多いほうが紛れる、 少し寂しい、 何となく左の掌を見る、 うーん、マイ地図だ、 感情線頭脳戦生命線は幹線道路、 太陽線運命線財運線は広い道、 他の道筋は横道細道、 感情線と太陽線が交差しているそばの横道に、 何だか気持ちが吸い寄せられる、 そうだ、我が家はここにある! とたんに、 掌はグワーンと拡大し、 みるみるうちに駅前を呑みこんだ、 ロータリー左手の道路は、 まっすぐ北へ延びている、 その道を行って感情線を渡れば、 我が家はすぐに解る、 僕は歩き出した、 時計台さん、ありがとう、 少し楽しい。
スクロールしてご覧下さい。▼