3度めの3・11の今日に強く思うこと、見えない糸でずっと前から被災地と結ばれていたんだな、ということ

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志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ No.305 2014年3月10日 掲載分
 

3度めの3・11の今日に強く思うこと、
見えない糸でずっと前から
被災地と結ばれていたんだな、ということ


3.11の翌月から被災地慰問を開始して、
年に数カ所の被災地を訪れている、
今年は気仙沼市の階上小学校、
久慈市の久慈湊保育園、長内保育園を訪れた、
年内はもう2箇所ぐらい行けそうな気がする、
以前に講演や、読み聞かせで訪れたところではなく、
生まれてはじめて訪れた被災地でも、
前々からの思わぬ縁に触れて驚くことがある、
もっとも驚いた縁のことを話したい、
3・11の年の暮れのこと、
気仙沼市大島町で、
お話の会をやっている人から電話を頂いた、
私たちの住んでいる大島も、
31人が犠牲になり、
大きな被害を出しましたが、
ようやく復興に向けた立ち上がろう、
という気持ちになったところです、
私たちの島へ慰問にきてもらえないか、
という依頼だった、
日時が合っていくことになった、
僕はうかつなことに、
気仙沼に大島があることを知らなかった、
それで、いろいろ予備知識になることを調べた、
ある1つの事実を知ったとき、
思わず僕は叫んでいた、
気仙沼・大島は、
緑の真珠、と呼ばれている、
それはこの島で生まれ、
島の大島小学校出身の人が、
海はいのちの源
波はいのちの輝き
大島よ、
永遠に緑の真珠たれ
という賛辞を与えたことに由来する、
その人は詩人・童話作家だった、
水上不二というその名を見たときに、
僕は衝撃を受けて叫びを漏らしたのである、
伊豆の海辺に生まれた僕は、
国鉄職員の父の転勤で、
小学校の6年間は都下の小金井市で暮らした、
5年のとき、
僕のクラスに大柄の女子の転校生が入ってきた、
水上伶子、と言った、
伶子ちゃんはもの静かな性格で、
休み時間はいつも何かの本に読みふけっていた、
国語の時間だったか、
質問を出して手を挙げた伶子ちゃんを指し、
それに伶子ちゃんが答えた直後に、
担任の先生が、
「伶子ちゃんのお父さんて、
確かものを書いているんだよね」
と、訊くともなしに言った、
そのとき、僕の頭でピンと反応するものがあった、
当時、光文社発行の少年という雑誌を購読していた、
コラム欄に連載されていた詩を愛読していた、
いつも海にちなんだ内容で、
カモメ、砂浜、貝殻、ヨット、小島などが登場して、
5歳で海辺の故郷を後にした僕は、
毎回、とても郷愁をそそられた、
その詩人の名が水上不二だった、
それで担任の先生が、
伶子ちゃんにお父さんのことを訊いたときに、
水上不二は伶子ちゃんのお父さんだ、
と、咄嗟に確信したのだ、
翌日、少年の最新号を持って登校し、
伶子ちゃんにそのページを見せて、
「これ、お父さんだよね」
と、確認した、
寡黙な伶子ちゃんは黙って大きくうなずいた、
気仙沼・大島の人からの1本の電話は、
伶子ちゃん経由の気仙沼・大島と僕をつなぐ、
見えない糸をたぐりよせたのである、
水上不二という詩人・童話作家は、
一般的には無名に近い、
単行本作品は、
「僕は地球の船長だー水上不二詩集」理論社、
他2,3点に留まる、
しかし、
僕が愛読している詩の作者が同級生のお父さんだ、
という事実は、
僕にとって大きなインパクトになった、
小学校を卒業してからの伶子ちゃんの消息は知らない、
社会人になってから何度かクラス会、同窓会に出たが、
伶子ちゃんの消息を詳しく知る者はいなかった、
知り得たことは、
結婚した、ということぐらいだった、
ただお父さんが亡くなった、
ということは何かで偶然知った、
新聞か、詩誌の訃報欄でのことだったのか、
翌2012年の2月、
3人で慰問のため大島へ渡った、
大島は津波に蹂躙された後、
気仙沼港から流れ出た重油が、
火の海と化しながら、
島の北東部に流れ着いたため、
未曾有の大火に襲われている、
二重の災害に襲われた、
その大島は仮設の埠頭から見た限り、
無残な痕跡を留めていたが、
内陸にある小学校で開かれた、
読み聞かせ会にきてくれた人々は、
子どもも大人も活力に溢れていた、
終わって主催者の人たちとの懇談で、
伶子ちゃんが数年前に他界したことを知った、
島の人も詳しいことは知らないようだった、
何だか僕の中で伶子ちゃんは、
謎めいた人になってきている、
それでいいのかもしれない、
その日は西南部の断崖に建つ国民宿舎に泊り、
翌早朝、断崖を下りてみた、
津波は断崖の上まで這い上がってきたらしい、
断崖の途中の松の木はどれも、
太枝がボッキリへし折られていた、
断崖の下は、
こじんまりとした浜になっていた、
砂浜ではなく岩のかけらが目立つ浜だった、
津波に襲われる前は、
玉砂利を敷き詰めたような美しい浜だったに違いない、
沖合を見ながら、
少年に連載されていた、
詩の舞台の1つはここだな、
と思った、
午前中に児童館で、
仮設に住む高齢者の方々を、
主な対象にした読み聞かせ会を行って、
島を後にした、
すっかり緑の真珠に戻った大島を再訪したい、
と思いながら、
僕はフェリーの舷側から、
遠ざかる大島を見つめ続けた。

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