太平洋戦争から学ぶ人権、と題して書かれた中学生の作文に目から鱗がパッパッ弾けた

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志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ No.344 2014年12月6日 掲載分
 

太平洋戦争から学ぶ人権、と題して書かれた
中学生の作文に目から鱗がパッパッ弾けた


昨日、
厚木市の人権講演会で「今、親は子とどのようにコミュニケーションをとるべきか」
という題で講演を行ってきました。
講演に先立ち、人権作文や、人権ポスターに応募して入賞した
中学生たちの表彰式が行われましたが、
それが終わるまで僕は控室で待機していました。
いただいた資料の中に、
表彰されている最中の入選者の入選作文集が入っていたので、
その目次をめくると、
一人一人の人権…
一度いじめに関わって…
「かわいそう」の差別…
など、人権講演会に講師として招かれる機会の多い僕には、
魅力的なタイトルが並んでいます。
1つのタイトルに目が点になりました。
太平洋戦争から学ぶ人権……
おいおい、太平洋戦争が終わったのは、
69年前のことだよ、
きみのお父さんお母さんだって、
まだ生まれていなかったんじゃないか。
驚きながら一読して本当に驚きました。
中学3年の作者は、
太平洋戦争の悲劇を知るにつけ、
それ以前に起きた事件の何が起きなかったら、
その戦争を防ぐことができたか、
という授業の課題で、
満州事変を選ぶのです。
当時、満州と呼ばれた中国東北部を実効支配していたのは、
張作霖率いる奉天軍閥でした。
作文で作者が訴えようとしていたことをよく理解してもらうために、
張作霖が北京を去ってから満州事変に至るまでの経過を整理しておきます。
張作霖は北京の国民党政府で要職についていましたが、
中央での勢力争いで不利になり、列車に乗って根拠地の奉天への帰途につきました。
この頃、清朝滅亡後の混乱に乗じ満州での権益を増大させていた日本は、
張作霖が奉天へ戻ることに警戒心を高めました。
満州駐留の日本軍は関東軍と称していましたが、
関東軍は欧米列強に支援を仰ぎ、
日本との距離をとりはじめた張作霖が目障りな存在になっていたからです。
それでついに奉天を間近にした張作霖を列車もろとも爆破、死に至らしめました。
張作霖の息子の張学良が奉天軍閥を継ぎますが、
張学良は蒋介石の南京国民政府に合流します。
関東軍は国民政府軍に脅威を抱いていたので、
座視していられなくなります。
再び、奉天郊外の柳条湖というところで、
今度は線路を爆破するという事件を起こし、
国民政府軍の仕業に見せかけました。
この事件により関東軍との間に軍事衝突が起こり、
関東軍は勝利を収め満州全域を支配しました。
これが満洲事変で、
国民政府は国際連盟に日本を提訴し、
日本は国際連盟を脱退するという事態を招きます。
日中の対立はやがて本格的な日中戦争へ発展し、
欧米諸国は石油などの日本への輸出を禁止し、
大陸からの撤兵を求めました。
追い詰められた日本は、
真珠湾攻撃を敢行し、
太平洋戦争が始まる。
そういう流れの中で、中学生の作者は、
どうすれば満州事変を起こさずにすんだか、
と問題提起を行い、
「私は日本の権益を中国に広げようとしなければ良かったと思う。…中略…
日本は自分達の国のために、力をつけて国を守ろうとしたのだろう。
しかし私はそれが正しいとは思えない。なぜなら日本は
相手の中国の気持ちを考えられていないからだ。…中略…
それぞれの国の権利をもっと大切にして、お互いを尊重するべきだったのだ」
素直に純粋に考えれば、このとおりで他に何の言葉も必要ない。
何だか日中韓の首脳を前にして、作者にこの作文を朗読してもらいたい、
とふっと思った。
作者は、これは人権でも同じことが言える、と主張している。
「戦争を学ぶことは人権を学ぶことに繋がる。戦争で犠牲になった多くの人の命を
無駄にしないためにも学んだことを活かし、私達の手で平和な未来を創っていきたい」
作文の末尾の言葉は、僕の胸にしみた。
僕の15歳上の兄は昭和20年8月に旧満州の地で戦死している。
戦争の犠牲になった人達は、
しっかりと人権が守られた平和な未来社会を願って、
命を捧げていったのではないだろうか。

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