著作権切れ商法「風と共に去りぬ」の新訳は老舗2社が競う結果になったが、はたして風は吹くだろうか?

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志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ No.361 2015年4月17日 掲載分
 

著作権切れ商法「風と共に去りぬ」の
新訳は老舗2社が競う結果になったが、
はたして風は吹くだろうか?


永遠のベストセラー「風と共に去りぬ」は、
戦時色が急速に強まった時代の1937年(昭和12年)に、
三笠書房から発刊されている。
もっともベストセラーになったのは戦後のことで、
アメリカ文化がどっと入ってきた時代に、
アメリカを代表する文芸作品ということで、
読まれたということだろう。
8歳年上の次姉の本棚にもあったから、
その頃、20歳前後の女性によく読まれたのかもしれない。
ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル主演の同名の映画が
日本で公開されたのは1952年、
次姉は20歳だった。
次姉は映画が先で、
それから本を読む傾向が強かったから、
映画で涙ぼうだになって本を買ったのかもしれない。
いずれにしても三笠書房刊は、
300万部を超える大ベストセラーになった。
新潮社が同作品を文庫で出版したのは、1977年のことで、
今日まで5巻累計で約357万部を発行している。
新潮社の新訳版は3月26日に1,2巻が発売され、
以降は4月末から順次5巻まで刊行される。
岩波文庫刊は全6巻で4月16日に刊行開始になった。
ところで、
「風と共に去りぬ」がどこかでブレークしている、
ということでもないのに、
なぜ文庫の老舗2社がほぼ同時期に競合しての刊行になったのか。
原作者のロバート・ミッチェルが没したのは1949年、
戦時加算10年を加えても、
2009年頃に著作権が切れている。
つまり、版権料なしに自由に刊行できるということである。
売れればうまい商売だが、
今の若い女性は全5巻や、
6巻ものの長大な作品に飛びつくだろうか。
モバイル世代には、
格調高い文章もとっつきにくいだろう。
かといって、高齢化した往年の読者が、
郷愁に駆られて手にするかどうか。
若い男性や、
中年世代の食指をくすぐるかどうかも疑問である。
同名の新作映画の公開でもあればともかく、
2社がほぼ同時期に刊行して、
相乗効果で売り上げを伸ばしていけるほどの需要は、
ないのではなかろうか。
2社の新訳本が共に大ヒットすれば、
出版市場にはまたとない刺激剤になる。
危ぶみながらも、それを期待したい。

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