志茂田景樹-カゲキ隊長のブログ No.387 2015年10月29日掲載分
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悲しい場面で笑い出した特養の高齢者たちに生きることの素晴らしさを教えられた。 |
「よい子に読み聞かせ隊」を結成して半年ほどの頃でしたから、
2000年の冬のことだったと思います。
東京都内の特別養護老人ホームを慰問で訪れました。
後に「よい子に読み聞かせ隊」に加わり、
6,7年、中心メンバーとして活躍してくれたK子さんが、
フルートの演奏を挿入してくれることになっていました。
当時、K子さんはまだ高校生でした。
職員の方も合わせて60人前後の人たちが待っていてくれました。
車椅子の人がかなりいました。
フルートの調べに乗せて語りだしました。
僕は絵本によって読むのではなく語りでやることがあります。
利用者の方の多くは初め固い表情でした。
1人2人のその固い表情がほぐれて笑顔になりました。
別の利用者が笑い声を上げました。
車椅子の方々の多くは笑顔になっていました。
僕は大変やりづらい思いになりました。
僕が語っている場面はその物語でいちばん悲しい場面だったからです。
子供たちがこの場面ではよく涙をこぼします。
笑顔になられるはずはない場面でした。
実際に利用者の何人かは涙ぐんでいました。
やりづらいといっても少しいつもと違うぞというぐらいで、
呼吸が乱れるほどではありませんでした。
終わって僕は職員の方に、
「悲しい場面で笑いだした人達がいましたが…」
と尋ねました。
「ああ、あの人たちは痴呆症なんですよ」
当時はまだ認知症という病名は使われていませんでした。
「感情を揺り動かされたんです。読み聞かせは声や色。絵や音楽など、
いろんなもので訴えかけてくれます。特に隊長のファッションは、
痴呆症の人たちの感受性を刺激するんです。笑いながら楽しい思い出や、
懐かしい人の顔などを蘇らせてとても良い気持ちになっているんです。
延命にもつながりますし、私たちきていただいて本当によかった
と喜んでいるんです」
僕は目から鱗が落ちた心地になりました。
以来、特別養護老人ホームなどの施設はかなり訪れましたが、
認知症の人の表情をよく観察するようになりました。
その表情が変化を始めると、
読み聞かせのどこかの何かで心の回路が反応を起こし、
こっちが知らない世界に遊んで精神を豊かに広げているのだ、
と羨ましくなることもありました。
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